FF16をちまちま進めていて、ようやくクリアしたので感想をメモ。この数日間、とても楽しく過ごしました。大変面白かった。ただプレイし終わった後、誰かにどういうゲームかと聞かれたら「全部どっかで見たことあるゲーム」というゲームでした。あと召喚獣バトルは後半の失速具合がつらかったです。
本記事は主観的な感想で、レビューではないことに注意してお読みください。あとマジで長いです。
感想はIGN辺りのレビューと驚くほど同じでした。推敲された文章で読みたいならそちら読んでもらえたら、この記事で述べてる感想とほぼ同じことが書いてあります。
最初に、管理人のスペックと、ゲームの難易度設定について
- アクションフォーカス
- サポートアクセサリなし
- 1週目
- 普段アクションゲームはあまりやらない
- 昔々PS2時代ぐらいのゲームまでなら高難易度で遊んでた
- ソウルシリーズとかはド下手、昨今のフロムゲーは全然クリアできない
- 初FFは「物心つくかつかないか頃に、親が買ってた1、本格的に遊んだのは3から」の、老害寄りの感想を持ちがちの自覚がある中年
全体的な所感 たくさんあるのでQA形式で
- Q:斬新で、新しいゲームだった?
- A:いいえ。DMCと、GOWと、KHと、その他優秀なゲームから良いとこどり、という感じ
- Q:斬新で、新しいファイナルファンタジーだった?
- A:システム的には、そう。ストーリー的には、いつも通りだった
- Q:「最高だなー」と感じた場面はどこ?
- A:初リミットブレイクのシーンとタイタン戦。「ゲームしてるな!」という気分だった
- Q:ストーリーは重厚だった?
- A:いいえ。暗いけど重厚ではない。3部それぞれ別な作品を見ているようで、戸惑った
- Q:どんな雰囲気でストーリーは進むの?
- A:前半の感想でも書いた通り、最初は重厚で、後半は青年・少年マンガ的な雰囲気で進む
- Q:キャラクターはどうだったの?
- A:ここでは語り切れないので別項目で。正直ネガティブな印象がかなり強い
- 特に敵側は魅力が薄く、記号的なキャラクターしかいない。ファイナルファンタジーシリーズの中でも特に(数十年前のFC時代は除いて)、印象に残らない敵キャラ達だったかもしれない
- トルガルだけが最高だった
- Q:エンディングはどうだったの?
- 「クライヴのエゴ」も「ジルのエゴ」も結実する描写が無いまま終わる
- 「生き延びて帰る」「クライヴと一緒に生きる」どちらも描写が無い
- クライヴの物語なのに、クライヴの結末の演出がアレははちょいズルいと思う
- 好き嫌いはありそうだけど、個人的にはスタッフロール後のエピローグ込みで納得はした
- 「クライヴのエゴ」も「ジルのエゴ」も結実する描写が無いまま終わる
- Q:普段の戦闘はどうだったの?
- ずっと「DMC新作っぽい」感じ
- でもFF16のオリジナリティも感じる
- 1週目は超ヌルい、アクションゲーム苦手おじさんでも大丈夫
- 本当にゲーム初めてって人もサポートアクセサリでOK、サポートアクセサリは発明だと思う
- Q:噂の召喚獣バトル+QTEはどうだったの?
- タイタン戦で力尽きてんじゃねーよ!!!!!
- 正直この手のバトル演出は、スクエニならキングダムハーツシリーズのが上だと思う
- GoWシリーズもどうしても頭によぎる
- QTE初めて!みたいな人には最高の体験だと思えるような、ハイクオリティではあると思う
- Q:画面暗かった?
- A:暗い。見えないほどの場所は少ないが、ずっと暗い。
- ゲームプレイ中、6割ぐらいは暗い画面。これぐらい暗いゲーム少ないんじゃないか
- 結局、晴れ渡る青空のロケーションを見る機会は数えるほどしか無かった
- FF14経験者に伝えるなら、後半の数十時間以上は「ずっと妖霧(ちょっと弱め)」の空
- ダンジョンも無限に暗い、ドラゴンズドグマの暗いダンジョンずっと歩く感じ
- Q:フィールドどうだった?
- 荒地と砂漠、焦土のような黒い土地ばっかりの印象しかない
- FF14経験者に伝えるなら、大半のストーリー進行部分がアラミゴに集中してる感じ
- 草原もちゃんとあるけど、ストーリーの中盤~後半にかけて荒地か砂漠にいる機会が非常に多い
- 休める場所は村や素朴な宿場町ばっかりで、城下町一つも入れない
- 城も自由に歩けない
- 美しい城や綺麗な街並みを「歩くこと」は期待してはいけない、体験版以降、一つも無かった
- オープンワールドでは無いからこそ期待していたが、各所の「美しいロケーション」のようなものは少なかったように思う。巨大な水道橋とかあるけど、それを見上げて、景観込みで感動できるような場所は少ない(「ほんまにFF14と同じチーム作っとるんかこのマップ」と疑いの目を向けるぐらいには少なかったです)
- Q:移動どうだった?
- このゲームの4割ぐらいの時間は多分、移動時間に費やされてる。移動時間多い
- 残り4割ストーリー、残り2割が戦闘という印象
- クライヴの歩行の遅さがずっと気になる
- チョコボは慣れてきたらまぁ、こんなものかとは思える
- 1.2倍ぐらいでもいい気がする。アップデートされたら2週・3週とできる気がする
- このゲームの4割ぐらいの時間は多分、移動時間に費やされてる。移動時間多い
- Q:サイドストーリーは楽しかった?
- A:苦痛に感じるもののほうが多い
- というか、物量や設計など、FF14の手癖で作られているとしか思えない
- オープンワールドでも無いしMMOでも無いのに、このスタイルを取る必要があったのか
- ストーリーの中身自体は良いものも多いと思う
- 最終ダンジョン直前のサイドストーリーの多さにはげんなりしたが……
- でも体験後は、全部やって良かった……とは思った
- Q:リスキーモブは強かった?
- A:1週目なのでキツくはないが、バランス良く面白い手応え
- スヴァローグというドラゴンは、解放直後にいったら中々歯応えがあった
- Q:ラスボスはどうだった?
- A:FFのボスだなって感じ。テンプレ台詞だらけだけど、それ自体は問題ない
- Q:過去作のオマージュはどれぐらい感じた?
- A:「FF14そのまま持ってきてんな」っていうモノはかなり多い
- A:「ネクロフォビア」はFF16ならでは感とうまく融合されていて、イケてたと思う
- Q:クライヴはどうだった?
- 「報われない男」もしくは「報いない男」という感じ
- 召喚獣バトル中は、別キャラが乗り移ってるんですかね?
- Q:CERO:Dならではの表現はどうだった?
- 「そもそも、説得力出すためのもの」という発言が開発陣から発売前からあった通りで、飾り・演出のためだけにあった
- 前半はリアリティの追求に使われており、重厚感の表現に一役も二役も買っていた
- 後半はそもそも「うぉぉぉお世界を救っていくぞ」みたいな展開になるので、だいぶミスマッチな気がした。痛々しさを表現するための流血に使われている程度
- Q:「買ったほうがいい?」と聞かれたらどう答える?
- アクションゲームとしての体験を得たいなら「DMCかGoWやれ」
- 重厚なストーリー見たいなら「開発陣もハマりすぎてオマージュしまくった”ゲーム・オブ・スローンズ”見れ」
- 総合的なゲーム体験を得たいなら「キングダムハーツかGoWやれ、召喚獣バトルの感動はそれで大体得られる」
- 祖堅のBGM聞きたいなら「FF14。1000曲以上ある。フリートライアルというものが…」
- PS5みたいなグラで、程々の難易度で、そこそこのアクションRPGが欲しいなら「FF16をオススメ」
ストーリー。3部構成という名の、3つの独立した作品
体験版で感じた重厚さは消え失せた。代わりに待つのは「熱血ちょいグロの異能バトル漫画」
見出し通りなのです。
フェニックスの飛距離と飛行時間ってどのぐらいあるのかご存じでしたか?少なくともシドの隠れ家からラストダンジョン「オリジン」までは飛行できないそうです。終盤クライヴがぽつりと、当たり前のように呟いたことです。そんなこと知らんのだけど……
なお、バハムート(ディオン)は、最初のオーディン戦ではあっという間に退いて休憩していました。……が、最終戦前では気合と根性で、ドミナントの力を失なっているにも関わらず自我を保ちながらオリジンまで長時間飛行してみせた上に、そのあとラスボスに一矢報いるまでバトルしてました。少年漫画のノリですね。
誰が、いつ、そんな事を調べて、クライヴがいつ理解したのか、そんなのは描写することも必要がない、些末な事なのでしょう。つまりドミナントの変身時間、移動時間や距離は、作中において本格的には描写されません。
それ以外にも、例えば作中の軍議も大体ノリで出来てます。「大人がオロオロする→敵役が大物感を出す」ばかりの、ド定番の演出のためだけに存在しています。
本格的な装いを見せただけの、ファンタジー漫画の背景としての戦争なのです。だから、それを理解しないまま私は体験版をプレイして、重厚さを勝手に感じ、ソレを期待して購入しました。なのでストーリーに対しては残念ながら、購入してしばらくの間、かなり期待外れでした。
ただ、「マンガなんだな?そうなんだな?」と気持ちや頭を切り替えてからはだいぶ楽しむことが出来ました。後半になればなるほどノリと気合と絆パワーで話は進んでいいます。社会問題の解消もしません。マザークリスタル破壊後の陰鬱な描写も特にありません。シドが一瞬、破壊前に躊躇っていましたが、それもクライヴは特に感じる描写もありません。虎視眈々とマザークリスタル破壊の機会を伺い、故郷を破壊するフーゴが出た時には感情的になり、イフリートでは熱血少年になり戦い、新たな力に目覚め、次のボスに挑むのです。たーーーのしーーー!!!
ちょっとわざと悪しように書いた部分もありますが、でもそうなのです。リアリティのある高画質な描写に惑わされず、いつものファイナルファンタジー……の中でも特に少年向けなのだと思うことにしました。CERO:Dではありますが、それも本当に血を演出で使いたいから、とかそういう事なのです。
(ラストバトルの、最後の「クライヴパンチ!完!」のシーンもそう。要所はリアリティ優先ではなく、常に「お約束」だけで構成されてる)
段々と一貫性が取れなくなっていく物語
1部では「貴族側から見た、残虐表現の多い、復讐のきっかけの話」でした。
2部は「ベアラー視点から見た、世界の歪さの話」でした。
3部、特に後半は「少年漫画、超常現象と戦う俺たちの話」になります。
多分3部は「世界のいびつさを正す話」になってもいるのですが、あまりに「FC~SFC時代ぐらいの初期のファイナルファンタジー(人の絆で悪を倒そう、みたいな流れ)」に転換しすぎていて、シリーズの呪縛から抜け出せないように見えました。
「前半、背景描写”こういうのが好きなんだよ”の部分に力を入れすぎたんだな」というのが感想です。
特に後半、個人的には、「クライヴとアルテマ」に集中しすぎていて、バルナバスや神皇と呼ばれる人物達をあまり上手く使えてなかった気がします。
例えば、バルナバスは何度も登場してきたはずなのに、フーゴより印象が弱いまま終わりました。(個人的には。)いわゆるマンガでは映えるはずの超強いオジサン枠だったはずなんですが、説得力のある主張が彼には一切ないので、会話内容が全然響きませんでした。自我を持ちながら「自我消せ」という主張も最初から矛盾しているので、「母上大好きオジサン」の印象しか持てないまま退場となってしまいました。もう一枚ぐらい奥深さが欲しかった。残念です。
神皇はおかしくなる前はどういう人物だったかよくわからないまま絶命してしまいました。あんなに尺取ってた人物なのに。乗っ取られている期間中とは言え、クリスタル自治領に侵攻したとか、ヴァリスゼアの歴史的観点からはかなりのインパクトがある事をしているのに。ディオンの頭の中にしか、彼という人間の記憶・記録は存在しません。
後半、人間の描写をする気がもとより無かったのなら、魔法と超常存在である召喚獣についての話にシフトするなら、最初からもっとクリスタルを中心に据えて、エネルギーが枯渇していくサマをムービーで見せるとか、サブクエストにもドミナントと召喚獣について深く研究している人や機関が出てくるとか、そういう事をもっと見せてくれてもよかったんじゃないかなぁ、と思っています。
キャラクターについて
ゲーム・オブ・スローンズとの類似性について
「開発のコアスタッフに見させた」と事前インタビューでも言ってるぐらいなので、ストーリーや各演出もそうですし、キャラについては骨格レベルで意図的にパロってるのだと思います。
あんまりこの記事では深く語りませんが、これが嫌な人は多分プレイできないレベルで類似性が見られます。ただ表面的な類似といえば、まぁそれはそうとも言えるので……この辺(似てはいるけど、それの受け取り方について)はなんとも人の感じ方次第だろうとも思います。
クライヴについて
人には多面性があるのは理解できますが、特に「シリアスで重厚感があるように見えるFF16」では、クライヴの多面性は中々理解し難いものに映ることがあります。
私がプレイした中でのクライヴとは「イフリートになると少年マンガの主人公になり」「終盤になるとFFの”人を絆を信じる主人公”になり」「サブクエストだと落ち着き払った俯瞰で物事を見れる、冷静で冷徹な大人になり」「大物の敵を前にすると語彙力が喪失し、魅力的な台詞も吐けず、”なにっ”などの簡単な反応しかできないキャラクター」という感じです。
なので、最後まで彼の人となりを掴めませんでした。場面が変わると性格が変わる主人公に対して、感情移入はし辛かったです。最初は「幸せにしてやるぞクライヴ」ぐらいのつもりでプレイしていたはずなんですが……。
特にイフリート化した時はその少年漫画的な主人公に変化してしまうギャップに戸惑うことが多くあり、最後まで慣れませんでした。
例えばバハムート戦でフェニックスとの合体直後「バハムートを倒す!!!」と意気込んだ時など、違和感を拭えませんでした。
たしかに状況としてはバハムート倒さなきゃいけない場面なのは判りますが、ジョシュアもクライヴもそれが目的で来たわけでもなく、「ジョシュアと再会したばかり+マザークリスタルを破壊しに来たという別な目的もある」中で、「召喚獣を撃退することを意思表明する」「しかも倒すという表現で」というのが、「これクライヴなんだよね?」……という感じでした。
最後の「大物の敵を前にすると語彙力が喪失し、魅力的な台詞も吐けず、”なにっ”などの簡単な反応しかできないキャラクター化」については、シドを除く他の味方キャラ全般に言える話です。
FF16は本当になんというか、敵側の主張に対してのセリフが「なんだと?!」とかそんなのばっかりです。「台本的だなぁ」と思う場面が随分多くありました。敵側の主張は滅茶苦茶なものや理不尽なものが多いにも関わらず、あまりに返事に論理性が、気力が、気合が無さすぎます。
ただ、クライヴについて、私が一点すごく気に入っているセリフがあります。
それは、矛盾するようですが、ここぞという時に変化する際の「イフリート!!!」です。彼の「イフリート!!!」の叫び方は本当にカッコいいので、是非皆にも聞いてほしい。終盤ほとんど叫ばなくなりますが。
「女性ヒロイン」のジルについて
ジルに関しては「裁縫が得意な、主人公のことが好きで、主人公にとって不利益な行動はほぼ取らない、対属性のヒロイン」と書くと、いかにストレートな造形か判りますが、本作中、彼女の願いはほとんど叶うことはありません。本作で一番報われない人といっても過言ではないでしょう。
クライヴとの関係性についても、「共に最後まで戦いたい」「共に生きたい」どちらのエゴも報われることは(作中の描写中では)ありませんでした。
ただ、ジルというキャラクターの重要なところはそれを表出しないところにあると思っています。
つまり不満を滅多に言わないし、行動を阻害する場面もほとんど無い。この自我にまつわる物語において、彼女ほど自我が希薄な人物もいません。鉄王国に、クライヴに、あるいはシナリオに、善かれ悪しかれ(重要)、誰かに奪われ続けているからです。
人としての生き方を鉄王国に奪われ、生きる意味を復讐に託し、ドミナントのアイデンティティをクライヴに託し、最終盤では「必ず帰ってきて」しか言えない存在になってしまっていました。クライヴに対し、自分を含めたこれからの未来も託しているからです。こんなにも主張を奪われ続けたキャラクターは中々見ません。
だから、表出しようにも出来ない。プレイ中、彼女がもどかしそうな表情をする場面を何度も見てました。
最後はクライヴに託した事がダメだという話ではなく、だからこそ、彼女が自我を持った「人」になるためには、主人公の帰還・生還が必要だと思っていました。「クライヴと共に生きることが出来るエンディング」となって初めて自我を持つことが出来る、人になる話になるのだと思っていました。
実際のところ、エンディングでの彼女は演出の添え物でした。悲しいのですが、結局のところクライヴに、あの一言を言わせるためだけに彼女は存在したのだと思っています。割り切りがいいと見るべきか否か、ちょっと微妙な感想です。
「ベアラー」について
段々とヴァリスゼアに生きる、ベアラーの息遣いが遠のいていく
FF16では3部作的な形で、
- 1部は「貴族から見た、ベアラー達と狭い世界」
- 2部は「ベアラーから見た、辛い世界」
- 3部は「シドという役割から見た、救わなければならない世界」
と、見る立場、見える範囲が変遷していきます。1部2部共通で描かれていた「ベアラー」という存在が、33歳の3部になってから急に希薄になっていきます。
ベアラーの物語ではなくなっていくのは理解できます。クライヴの主観の物語なので、いつしかベアラーではなくクリスタルの物語になっていくのは理解できるんですが、その変遷の仕方があまりに急すぎて、「あれ、アカシアに駆逐されすぎて、世界からベアラー消えたんか?」と思うぐらい存在感が薄くなっていきます。
あんなに、町を歩いても道を歩いていても「このカスが!!!」「ベアラーの癖に!」みたいな罵声が聞こえ続けていたのに、急になくなるのです。表現が全体的に記号的とは言え、差別意識の有無も中盤まで確かに色濃く扱っていたはずなのですが、その問題をどう取り上げていくのか、昇華していくのかとても強く期待していたのですが、アルテマの話になった途端、世界から彼らの問題が、存在が消えていったのは、驚きを隠せませんでした。
「差別」とは、現代まで続く社会問題の一つでもあり、非常にデリケートな扱いを求められると思っています。FF14では主にアラミゴ関連でその重苦しい話題を、比較的、正面から取り合っていました。FF16もまた探求の物語、難しい問題にも何か答えを出すんだろうかと思って見ていました。
FF16のエンディングでは、それが「今後、ベアラー(差別対象者)は生まれない」という帰結で、ベアラーに関する諸問題は全て解決します。
別にいいんですが……こんな雑な解決法にするなら、濃く描く必要は無かったでしょう。
しかし、ファイナルファンタジーとしてはこれでいいのかもしれません。人とは善性であり清潔で、悪性のどうしようもない悪役がどこかにいて、さらにそれを掌握する上位存在がいて、それを倒せば、すぐでなくとも未来に希望を託す形で、解決していく。
……
「ベアラーのくせに!」という言葉を、このゲーム中、何度聞いたことでしょう。ですが、それは物語上ではただの背景の効果音に過ぎず、ただゲーム的に、システマチックに解決されるだけの問題だった事に、私が拍子抜けしたということだけの話なのかもしれません。
ベアラーは一貫して演出の道具、悲惨な世界観を表す、文字通り「道具」のような存在であり、「生まれながら自我を取り上げられ、だれかに使われるだけの存在」です。そういう意味では、本作のストーリーとしては、別な使われ方がもう少しあっても良かったのではと今でも思ってはいます。
結局、差別意識の問題は何も触れられないまま終わるノースリーチ
「ノースリーチには、ヴァリスゼアの中でも特に強いベアラー差別意識がある」って最後まで覚えてた人、どのぐらいるんでしょうか?
「洗濯物を絶命するまで乾かすベアラー」とか、出生率を考えても「そういう使い道にはならんやろ……」と思える人権意識の低さが垣間見えるノースリーチですが、この場所、物語の途中からベアラーの数が激減します。
激減するというのはストーリー中言及されるとかではなく、ある場面から突然、存在自体が消えます。ベアラーであるNPC・関連サブクエストが減るんですね。
終盤のベアラーの諸問題はマーサの宿に集中させたデザイン的な話は理解できますが、それにしたって「ベアラー、このドクズが!!!」みたいな事を言い続けてた民や兵士たちがどうなるのかと思いきや、ベアラー関連は本当にどうにもなりません。
後半になると綺麗サッパリ、ベアラーの存在ごと、問題が消え失せてる(ように見える)わけなので。クライヴから存在が見えなくなっちゃったんですかね。
そのあともなんやかんや街を助ける羽目になって、「これから民も騎士も一緒になりましょう!」って帰結を迎えたとしても、差別意識が解消された表現はどこにもありません。
そんな街に何の愛着も沸かないです。ベアラーはいないもの。俺が救いたかったのはお前たちじゃないんだよ。という気分です。(ここは個人の感想でしかないですが)
愚かで、薄っぺらい、記号的なNPC達
サブクエストに特にみられるのですが、FF16には「非常に視野が狭く、短絡的で、排他的」な人間が数多く登場します。
記号的なモブキャラクターは、そのシリアスな世界観への没入感をどんどん削っていきます。先のベアラー関連と合わせて見ると、ますます酷く、滑稽に映る場面が多々ありました。
個人的には、ダリミルの終盤のサブクエストはかなり酷かったです。
ルボルに対して助けてもらっていた人が多いにも関わらず「住民側もアカシアに追い詰められていて精神的に張りつめている」とか「ルボルが普段から嘘をついている」ようなバックグラウンドも無いまま、一方的に投石、彼を駆逐しようとます。
プライドが許さないということなのかもしれませんが、こんな「物語序盤に展開できるような」テンプレストーリーを、ラスト直前のサブクエストで見ることになるなんて……
(しかも、先に挙げた、特に差別意識が強いはずのノースリーチでは「マダムは過去ベアラーと」……という流れでも反抗したり躊躇う住民や兵士はほとんどいませんでした。実はダリミルのほうが差別意識が強く残ってるのか?)
この後、子供たちに説得された大人たちが投石を辞める、までは百歩譲って良かったんですが、更にその後、手のひらをひっくり返して「お前しか首長ができない!」って住民が言い出すのは、それは急展開すぎんかな……ルボルもOK出してますが、ノリで返事してるとしか思えません。
他の住民たちはどう思うのか?この先ベアラーが首長になった経歴が残る街で、外部から弾圧を受ける可能性はないのか?「隠れながら俺たちを支えてくれ」ではダメだったのか?みんな急に石を投げるほど激昂していた感情の根っこは、本当に収まったのか?それを無視して一部だけで首長って決めていいもんなのか?
こういう描かれ方、差別問題の解消のされ方そのものが、ベアラーの表現が、愚かなモブ達の動きが、記号的に感じてしまうわけです。「解決の仕方ファミコン時代かよ」「この解像度でやる話じゃないだろ……」「FF16は本当薄っぺらいモブだらけだな……」という感想になってしまう原因なのだと思っています。
ダリミルは特に街の雰囲気も含めて好きだったのですが、住民たちの息遣いが聞こえるような中盤までの印象は、このイベントで消え失せたと言ってもよいです。私の中で、彼らは「世界に生きる人」ではなく、急に「物語の都合上で制御される、ただのコマ」に印象が変わりました。
魅力的なNPCがいないわけではありません。例えば不死鳥教団のような存在は、FF16の世界観とストーリーにマッチした魅力的なNPCにも見えますし、シドの隠れ家のNPC達のクエストはどれもプレイしていて価値を感じるものばかりでした。言わずもがな、叔父さんとかもそうですね。
でもこの項目に記述した通りの、短絡的なNPCが数多く、メインストーリーにも登場します。特に……いわゆる「軍議を担当する大人たち」的な立ち位置のキャラクターは本当に表面的で、いつもオロオロ、愚かな面だけが切り取られ、戦争をリアリティある描写にするつもりの作品とは思えませんでした。
ただ、これは体験版をプレイしたことによって、重厚感やリアリティを期待していた、しすぎていた私の感想です。FF16はそこを推していなかっただけのことで、「シリアスではない」ということではないので、そこは勘違いされないように。
画面の暗さについて
ゲームプレイに支障はないが、HDR未対応なら「FF16を体感できてない」レベル
まず、私は「HDR未対応の、少し古めのリビングTV」と「HDR対応のモニタ」でそれぞれプレイしましたが、どちらもゲーム進行が不可能になるレベルではないなと、最終的には思いました。
ただ、HDR未対応だと進行はできるがゲーム体験は間違いなく損なうレベルではあります。
美しさについては、PS4のゲームやってるのと多分大差なくなると思います。(ここは解像度もあるかも)
明暗ついては、暗すぎるのもそうですが、そもそもグレートーンのフィールドが数多くあり、黒の濃淡を認識できず、のっぺらい画面になり、あまり美しい背景に感じることができません。
HDR未対応でも気にならないという人もいるでしょうが、その人たちもFF16が本来意図した画作りを感じることはできていないというのは間違いないでしょう。
それから、明るい場面……はめっちゃくちゃ少ないのですが……ズゾノフ石灰棚が顕著ですが、その場面の白飛びがかなりキツいです。
ちなみに、HDR対応で「暗い場面が美しく見える」のは間違いないですが、「暗い場面が、すべて見通し良くなる」程ではありませんので、注意してください。
「暗い場面」「炎の演出」「石灰棚の景観」全ての美しさが雲泥の差になるので、HDR対応は必須級と言ってもやはり過言ではないと思います。
フィールドは暗い
アップデートで青空が導入されるなら、課金してでも購入します。スクショでも見てわかる通り、きれいなんですよ。
美しい青空の下、緑生い茂る草原を、アンブロシアに乗って走り回れるなら、課金アイテムだったとしても購入に値すると思っています。
※マジで待ってます
逆に言えば、そんな青空の場面はゲーム中数えるぐらいしか無く、あったとしても大半のロケーションは砂漠か荒地です。
PS5の性能をフルに発揮した、灰色か紫に染まった空の下、砂漠と荒地と黒い土地を駆け巡るのがFF16です。そう言っても過言ではないぐらい、快晴のロケーションは絶望的に少なかったです。
ここは期待外れでした。こればかりはストーリー的に仕方ない……とは言いません。表現の仕方はいくらでもあるので。せめてED後の世界を巡れたらなぁ……。
ダンジョン(攻略ステージ)も暗い
やっぱ暗いよ。
HDR対応だろうが未対応だろうが、やはり暗かったです。ホラーゲーム……とは言いませんが。
ただ体験版の砦が一番暗いというのは嘘ではなかったです。あれが一番暗いロケーションだったと思います。
想定外だったのが、「フィールドも含め、明るいロケーションがマジで超少なかった事」です。ほとんどの攻略ステージは夜だったり灰色の空だったり、なんか暗かったりする場所だらけです。
ストーリーとはマッチしていましたが、「最新の画像品質のFF」としてはもうちょっとバリエーションが見たかったな、というのが本音です。
バトルのシステムについて
アクション周りについて
やっぱり手触りがDMCでした。体験版感想でも前半感想でもここは変わりません。
で、これがまた、さすがに完成度が中々高かったです。ウリの一つにするだけあります。
「簡単すぎる(ただしサポアクセ付けてる)」とかよくわからん感想記事も出回っていたようですが、ここに関しては自分で調整できる現代のニーズによくマッチしていると思います。
何より、何度も書きますが3Dアクションのハードルを低くすることの出来るサポートアクセサリ※は発明だと思います。アクセサリスロットを1つ消費するデメリットもあり、単純なスイッチ式にしていないのも好印象です。
※私は動作確認程度にしか使っていませんでしたが、アクション怖がる人に滅茶苦茶オススメしやすいです。
また、アビリティを駆使してテイクダウン後に叩き込んだり、リキャストタイムやリミットゲージ等のリソースの使途をリアルタイムに考えて、テイクダウン前後どこで消費するか考えるのは中々オリジナリティ溢れるバトルになっていたと感じます。
細かいところで不満はなくはないですが、(ビルドセットみたいなのが登録できると良いな、とか、召喚獣の切り替えもう少しボタン+十字キーでやりたいな、とか)アップデートで対応されるかもと思うと、そんなにネガティブな印象はありません。
カスタマイズ面で
RPG的な遊びが少なすぎるのはちょっと気になりました。
初心者向けにシンプルにそぎ落とすのは理解できてはいるんですが、「バーサーカーリング」のようなダイレクトな遊びにつながるアクセサリやアビリティはもっと欲しかったのが本音です。ステップ飛距離を伸ばすとか(これはシヴァがあるからなのかな……)、二段ジャンプ出来るとか、パリィがもっとしやすくなるとか、攻撃アイテムがあるとか。
属性相性とかもないので、あんまり考えることが無いまま遊べるのが良いことと言えば良いことなのかもしれません。
難易度の話
1週目しかやっていないので、比較的ヌルゲー寄りでした。サポートアクセサリ無しでもそもそもドッジの判定自体がかなり緩いので……
もちろん難しい場面もあったとは思いますが、終盤はリスキーモブ探索+討伐しているだけでLvがそこそこ上がってしまい、ちょっとごり押し出来る場面も増えてしまいました。
召喚獣バトルの話
タイタン戦で力尽きたんですよね?????
リソース配分を間違えたんじゃないのとすら思ってます。オーディン戦で省略されるとは思わなかったし、ラスボスのアルテマ戦ですらバハムート戦よりも単調なつくりでした。
ぶっちゃけタイタン戦以降、それを超える演出も盛り上がりもありませんでした。
こっちはジェットコースター乗りに来たんだぞ、ジェットコースター乗らせてくれよ……。
個人的な経験もあり、類似作品として「GoWシリーズ」や「キングダムハーツシリーズ」を挙げていますが、(KHやGowの作品群に対してポジティブな感想ばかり持っているわけでもないんですが)この手のバトル演出にはこういった先輩となるゲームがあったはずです。
にも関わらず、タイタン戦でアイデア全て出尽くしてます……的な状態はちょっと何とも言えない気持ちになります。
この先も二転三転してバトルが続くんだろうと、前日にサブクエストを数時間かけて終わらせ、プレイ時間をたっぷり確保した次の日の夜、わくわくしてボス戦を開始したらあっという間にバトルが終わり、ストーリーの会話シーンだけが延々続いてPS5をレストモードにした一日はかなり空しいものがありました。
バトル全体を通してはエキサイトできてはいたと思います。ただ、それはどちらかといえば、クライヴ操作の場面で感じることのほうが多かったので、ウリとして挙げるには後半の失速具合が酷いな、と思いました。
BGMについて
これも前半感想と基本的には同じで「祖堅さんのBGMだな!やった!」という感じでした。
メロディが薄いと話題ですが、まぁ高画質ですしクライヴももりもり叫ぶゲームなので、それはそうなるでしょう。リスキーモブ戦のメロディは覚えました。「相変わらず良いBGMですね」という感想です。
(追記)インタビューで「ミニ祖堅システム」が動いているとのこと。確かに場面キッカリでBGM切り替わっていました。たまげたなぁ……。
その他の話
ダンジョン(ステージ)について
ミニマップが欲しい。
QA形式の箇所でも書いた通りですが「ミニマップ無くてよかったわ」と思った場面が一つもありません。無くすならどこまで歩けるのか見やすくしてほしい。
探索楽しませる気があるならまだしも、一本道の造りでほぼアクションゲームなのに、なんでわずかな分かれ道等を残しつつミニマップを削ったのか?
没入感を損ねるというなら毎回マップ画面を開いて立ち止まるほうがよっぽど損ねると思うんですが、そのへんはなんか感覚が違うのか、あるいは本当にミニマップあると「ミニマップしか見ないテストプレイヤーが続出する」ような状態になるのかもしれません。個人的には「バトル中は見えなくても、道中は表示してもいいんじゃないか?」という感想だったのでピンとはきませんが、開発者しか判らないこともあるのでしょう。
あと、すごくネガティブに感じているわけではないですが、アダプティブトリガー。多用するにしてもドアを開けるときじゃなくて、召喚獣の時こそアダプティブトリガーの機能を有効活用すべきだったんじゃないかと思っています。ちょっと頻度が多く、くどかったような……
最後に
総じての感想
面白かったです。「とても面白いゲーム」でした。
ただ、すべて何処かで見たことのあるシステム、画面、BGM、演出なので、「新しいゲーム」「新しいファイナルファンタジー」とは特に感じなかったです。
また、「世界観の重厚さを感じさせる前半の描き方」と「後半のマンガ的なノリ」は相性がとても良くなかったように思いました。ストーリーやキャラクターのセリフの一貫性を気にしないなら、他人にオススメ出来るかもしれません。少なくとも「ストーリー良かったよ、まず体験版やってみて」とはお世辞にも言い難いです。
あと画面も雰囲気もずっと暗いゲームです。明るい画面はほぼありませんし、終盤のロケーション、晴れ渡る空の一つすら期待すべきでは無かった……のはちょっと悲しかったです。
あとは、召喚獣バトルさえ、あれをとても期待していた人としては、もう少し……もう少しだけ、後半遊びたかったです。
アップデートか次回作で望むこと
美しい街を歩かせてほしい
美しい空を見せてほしい
もう少しだけ、早く歩かせてほしい
バトルの幅をもう少し広げてほしい
明るくしてほしい
ざっくり描くと、こんな感じです。このあたりがアップデートされると、快適に遊べるようにもなっていくと思います。(全体的に快適性を敢えて排除しているデザインも理解できなくはないですが)やはりもう少し気軽に遊べるようになって欲しいな、とは思ってます。
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